国際単位系のあれこれ8

長さの単位

長さの単位はメートル(記号m)です。メーターではありません。英語ではmetreです。

メートルはフランスが起源です。最初は北極から赤道までの距離の1/10 000 000としました。全長を測ったのではなく、一部を測定し緯度を測って換算したものです。それを白金や白金イリジウム合金の棒に写して原器としました。精度が不足してきたことからクリプトン86から出る光の波長の1 650 763.73倍に変更されました。現在ではさらに精度を上げるために光が1 sの 1/299 792 458 に伝わる行程に変更されています。メートルの定義が変更になった結果、北極と赤道の距離は約10 002 kmとなっています。

日本では尺貫法と言って、長さの単位に尺を使っていました。建物などに使う曲尺(カネジャク)では1尺約30 cm、着物に使う鯨尺(クジラジャク)では1尺約38 cmで日常生活で普通に使われていました。しかし今のSIの基となるメートル法に切り替えるために1958年に計量単位から外されました。非公式ではあるのですが、今でも6尺(曲尺)角の面積つまり約3.3 m2を1坪として住宅の大きさを表すのに使われています。

アメリカではインチ(記号in)、フート(記号ft)、ヤード(記号yd)、マイル(記号mi)が今でも使われています。1 in = 25.4 mmと定義されていて、1 ft = 12 in(=30.48 cm)、1 yd = 3 ft(=91.44 cm)、
1 mi = 1 760 yd(=1.609 344 km) の関係があります。定義が正確に決まっているので良いようですが、日米間での情報のやり取りなどではどうしても理解に時間がかかってしまいます。また、ものづくりでもアメリカではネジの形状ががインチで決まっているため、SIを採用している国との間では互いに不便を強いられ今も問題になっています。コンピュータではハードディスクドライブ(HDD)はインチネジを使っています。パイプもインチで決められたものが未だに日本でも多く使われていて、直径0.25 inつまり6.35 mmのパイプが6 mmのパイプと混在して間違いの元にもなっています。

また、単位をインチからメートルに換算するときに四捨五入すると元の量との間でわずかでも差が出ます。日常生活では問題なくても精密さが要求されるところでは事故になったこともあります。

原子物理学やX線の領域では大きさが使いやすいことからオングストローム(記号Å、1 Å = 10-10 m)が良く使われてきています。しかしこれはSIの単位ではありません。

これらの使いにくさや事故を防ぐことからも単位を共通化することは重要です。