国際単位系のあれこれ7
時間の単位
SI基本単位の中で重要な位置を占めるのが時間の単位「秒(記号s)」です。時間を基準にして長さの単位が決められています。時間は他の基本単位の定義にも使われています。それぞれの項目毎に説明して行きます。
江戸時代の日本では、日の出から日の入りまでと日の入りから日の出までをそれぞれ6等分して時を刻んでいました。昼夜の区別が重要な時代では都合が良かったのですが、季節と昼夜で時の長さが変わってしまいました。
正確な時の基準として最初は地球の自転を選びました。正午から正午までを1日としてその1/86 400を1 s(秒)としました。一方で、できるだけ変動の少ない時計も開発されていきました。すると、正確だと考えた1日の長さが季節などで変わることが分かりました。
そこで、基準を地球の公転に変更しました。しかし、時計が進歩し、新たに作り出されたセシウム原子時計の不確かさが数千万年に1 sとなってくると公転周期に変動がある事が分かり、基準をより正確なセシウム原子時計に変更しました。
現在の1 sの定義は、この時計に使っているセシウム133の原子の基底状態の二つの準位の間の遷移に対応する放射の周期の9 192 631 770倍となっています。
ここで困った問題が持ち上がりました。時間には時刻としての使い方があります。列車の出発時刻程度なら大きな問題にはならないのですが、天文観測などの精密な測定では時計と地球の位置のずれが問題となります。公転周期が時計と異なると同じ時刻でも地球位置は1年前とずれていることになります。そこで、「うるう秒」なるものを考えだしました。毎年2回、イギリスの1月1日と7月1日午前0時に1 s単位で時刻を調整するというものです。今までも何回か、午前0時(日本時間午前9時)に1 s加えられています。
時計は今でも精度を上げるべく改良が進められています。そのうちにまた1 sの定義が変更になると予想されます。最も新しい光格子時計では宇宙誕生からの誤差が1 s以下とのことです。すると、さらに新しい課題が出てきました。アインシュタインの一般相対性原理という言葉を聞いたことはあるかと思います。その内容はここでは説明しませんが、結果として重力により時間そのものの進み方が遅くなります。するといくら正確な時計を作っても、重力が異なればずれが発生します。時計を置く位置の高さが1 cm異なるだけで時間そのものの進み方のずれが分かるというほどです。
秒の記号sはsecondから来ています。secとかさらにピリオドをつけてsec.と書いてあるものがありますがどちらも間違いです。単位の記号はs一つに決められていますし、元となるsecondの名称の略号ではないのでピリオドは文章の最後でない限りつけません。
秒以外に分(記号min)、時(記号h)、日(記号d)を使うことは認められています。min.と小数点を付けているものを見かけますが、略号でなく記号なので書いてはいけません。また、hでなくhrと書いたり更に複数形だとしてhrsと書いているものもありますがいずれも間違いです。