国際単位系のあれこれ11
物質量の単位
前に書いたように分子や原子の数というとてつもない大きい数を表すために使われます。モル(記号mol)は0.012 kgの炭素-12に含まれる炭素原子と同数の単位粒子を含む系の物質の量と決められていました。
化学で、質量数―原子核を構成する陽子と中性子の合計-がありますが、炭素原子の大部分は質量数が12なので12 gを基準にしていました。最近はいろいろな手段で分子や原子の数を数える事が可能になったこともあって、やはり、2018年11月に新しい定義に代えることが決まり、2019年5月20日に改定されました。新しい定義は
1モルは正確に6.022 140 76×1023個の要素粒子を含む。この数値はアボガドロ定数である。
というものです。例えで言えば、「りんごで10 kgとなる個数を1箱という。これと同じ個数のみかんも1箱という」から「りんごでもみかんでも50個を1箱という」に変更したということになります。前と同様に、通常の使い方では定義が変わっても影響はありません。
以前は、モルは分子にのみ使われ、「グラム分子」という言い方もありました。イオンや原子には「グラムイオン」や「グラム原子」という言い方がありました。他に「当量」という単位もありましたがすべてモルに統一されました。これらの区別は単位の使い分けではなく、何の値かを誤解の無いように書くことで明確にします。酸素原子が1 mol、酸素分子が1 mol、酸素イオンが1 molというように表します。
光度の単位
カンデラ(記号cd)は、101 325 N/m2の圧力下での白金の凝固温度にある黒体の平らな表面1/600 000 m2あたりの垂直方向の光度となっていましたが、現在はその物質による表現が消えて、周波数540×1012 Hzの緑色単色の放射強度が1/683 W/sr(ステララジアン=立体角)である光度とされています。基本単位にはなっていますが、実質は仕事率の組立単位といってもよいものです。ただ、組立単位は一気通貫といって、係数は1/683のような数は許されず必ず1でなければならないので組立単位とするわけにはいきません。 人間の眼には放射される電磁波のうち可視光線しか見えないので実用上必要な単位として基本単位として残っています。