国際単位系のあれこれ2
昔、国際的な取引の契約の話を読んだことがあります。交渉の中で相手の欧州企業から「問題が発生した時は日本で裁判する」という提案を受け、喜んで受け入れました。取引の中で実際に問題が発生し、裁判にすると相手に伝えたところ、提案の理由が説明されました。それは、日本の判決は相手企業の国には及ばないというものでした。知識不足が損害に結び付く例です。
国際単位系に関係するものでは、超小型ポータブル電源の広告でバッテリー容量を 60,000mAh と書いているのはいかがでしょうか。ここには三点の問題があります。
第一は、バッテリー容量はエネルギーなのでアンペア時では表せないということです。乗用車用の鉛蓄電池であれば電圧が12 Vと決まっているのでアンペア時を使っても容量の比較ができます。しかし、この広告の様に電圧を明記しないものであれば何も伝えていないのと同じです。
第二はmAhとミリを使っていることです。普通に60 Ahと書かずに1000倍大きい数字に見せています。この手は「一流」企業でも使っていました。スピーカに供給する電力をワットで書かずにミリワットで書いていました。「2000 mWの大出力」といった表現です。
第三は一回目に書いた小数点のことです。60,000は60と同じ意味です。今回の広告でどうかは分かりませんが、本当に60 mAhだったとしても「うそ」ではありません。都会の土地1,000 m²を五千万円でいかがと言われ、安いと思って買ったら1 m²だったということもあり得ます。
世の中を生きていくには知識が大事という例でした。
原 眞一