「その時私は」物語:たつひとのスキューバ その5

スキューバの思い出その1 国内版

 スキューバでは色々な思い出があります。多くの思い出の中で特に印象に残っていることをお話したく思います。

【石西礁湖のサンゴ礁】
 初めは,深く潜りたい,潜った方がカッコいいと何となく思っていました。石西 せきせい 礁湖 しょうこ は,石垣 いしがき 島と西表 いりおもて 島の間にある日本最大と言われるサンゴ礁海域です。このサンゴ礁の縁 へり に浮かんで,水面下2m前後の遥かに遠くまで続くサンゴ礁の美しいこと,美しいこと,太陽の日を浴びてそれはそれは多分人生で最も美しい光景だったと思います。自然と涙が出るくらいでしたから。ここは,サンゴ礁の修復作業の一環でのダイブなので一般のダイビングスポットではなく,自然のままの圧倒される光景でした。
 これ以降,この石西礁湖のサンゴ礁を見てから深く潜りたいとは思わなくなってしまいました。潜れば潜るほど色がなくなり単色の世界になっていきます。まず赤からなくなり,次いで黄色と色が吸収され,最後が青になくなります。太陽というスポットライトを浴びた水深が浅い方がいろいろなものが綺麗に見えるのですね。

【サンゴの産卵】
 この石西礁湖で,サンゴの産卵を見に行く機会がありました。環境省のクルーザーに乗せてもらい,5月の満月に産卵するサンゴ産卵の調査に同行させてもらいました。残念ながら調査した場所のサンゴの産卵は見ることができませんでしたが,港に戻る海面にサンゴの卵のスリックが浮かんでいるのを見つけ,他では産卵したんだとの話を周りでしていました。実際,目の前で産卵をみるのはよいのですが,髪の毛がそれによりベトベトになるとの負け惜しみの会話もされていました。

【洞窟内の甕かめ
 沖縄本島の本部港からフェリーで30分で行ける離島の伊江島でのダイビングでの話です。洞窟探索で,洞窟の中に入ります。光はもちろんなく,水中ライトが頼りです。その光の中に並べられた甕が並んでみえます。泡盛の甕だそうで,海の中の微振動で泡盛が,美味しくなるそうです。泡盛も古酒といって10年,20年ものは高価です。ご存じのように,水の分子の間にアルコールの分子を細かく入れ込むには,緩やかな振動と時間が必要なようです。普通は蔵の中で寝かせます。私も石垣島の川平湾ある石垣島の山の名前「おもと」の名前の泡盛を製造・販売している「高嶺酒造所」に泡盛の甕 かめ を預けてあります。陸上より,海の中の方が波の振動で美味しそうな気がします。

【北海道の海】
 北海道でのダイビングショップはそこそこあるものの,沖縄に比べて寒いです。そこで登場するのがドライスーツです。中に空気を入れて中は普段着でもOKです。映画の007でジェームスボンドが,このドライスーツで海から侵入し,これを脱いできちっとしたスーツ姿で現れるシーンがありましたが,ドライスーツで潜ると汗でビショビショで,けっして映画のようにはなりません。経験しないと分からないものですね。

 海の方ですが,仕事で利尻島を潜りましたがまわりの環境にあわせているのかお魚さんは灰色や黒っぽく地味でした。確認のために潜った場所の近くにある水族館を訪れましたが,印象は同じでした。

【瀬戸内海の海と豊かな海】
 「海はきれいでないと」と一般に言われます。潜った瀬戸内海の海はみそスープ状態でした。視界で自分の手も見えないほどの状態です。でもこれが瀬戸内海の「豊かな海」であるところの証明です。海底から垂直に生える1m以上あるアカモクの海藻の中に分け入ると視界が途端によくなります。
 海の生き物による餌が海をみそスープ状態にして視界を悪くしているので瀬戸内海へ注ぎ込む川の浄化を進めすぎると牡蠣 かき のできに影響を及ぼすことや,海苔の色合いに影響するとの話を聞くとこのみそスープの海を思い出します。

【お魚さんはどこに】
 海の中は,どこにでもお魚が泳いでいそうですが,そうではありません。沖縄の海ではサンゴ礁の周り,本州では,根と呼ぶ海底の岩のまわりや海藻の中です。テレビなどでは魚の絵ばかり映すので,どこにでもいると思いたくなりますが,そうではありません。お魚を直接見ることができるので,お魚がいない場所に釣り人が釣竿を垂らしている時には,魚はいませんよと教えてあげたくなります。昔は漁業を生業にする人は,秘密のポイントを代々秘伝として受け継いできたのでしょうが,今は漁船につけた魚群探知機があるので簡単ですね。

【コブシメの色の変化】
 コブシメは,イカの仲間で,食用として高級品として一杯5000円から8000円するそうです。このコブシメに遭遇しました。そのコブシメがコンクリート製の漁礁近くを泳いでいきます。そしてコンリートの漁礁の上に差し掛かった途端に,体の色がそのコンクリートの色に変化しました。コンクリートの上にあるコブシメの体の一部だけの変化です。泳ぐにしたがってその色が体を移っていきます。カメレオンの話は聞きますが,本当にびっくりです。コブシメの体にカメラが付いていて,体の下方の色をキャッチしそれをモニターの体に映し表わしているようで,なんで生き物がこのように変化できるのかびっくりでした。

【俊足の亀かめ
 足が遅い動物の代表格が亀です。水族館の亀も悠々泳いでいます。ケラマでみた亀は,そっと後ろから忍びよったのですが,それに気づいた亀は,ピューとびっくりするようなスピードで逃げていき,あっという間に視界から消えました。これにはビックリしました。鈍足な亀の印象は陸上や水族館の水槽の中だけのようです。

 以上が国内版のスキューバダイビングの思い出でした。次は海外版のダイビング思い出です。

皆さまの「その時私は」物語のお話をお待ちしております。

企画担当 高橋達人 tatsudoc@nifty.com