「その時私は」物語:たつひとのスキューバ その3

【ダイビングを経験し新たにわかったこと】
 普段,陸上に生きている我々には,中々体感できないことをこのスキューバで知りました。そのお話をしたく思います。考えてみればそうなんですけれどその場に遭遇しないとなかなか実知識として身に付かないということありますよね。

【水深10mの意味】
 水深10mの意味が分かりますか? そう,2気圧になります。地上では大気の重さで1気圧です。海に潜ると水の重さで10m潜ると1気圧増えるのです。空気の体積が半分になります。体の中で外部とつながっているところはいいのですが,耳の中とか鼻の奥の副鼻孔とか,外と通じていないところは,耳抜き等の操作を行わないと痛くて大変なことになります。2気圧の環境に自分を置くことは普通の生活を送っていて通常はないですよね。水中20mでは3気圧,水中30mでは4気圧です。一番空気の圧縮率が大きいのが海面から10mまでのところです。

【地上での圧力の変化】
 地上にいるときは,ほとんど大気の重さを実感しないですが,台風や低気圧がくることで頭が痛くなる人もいますよね。飛行機は上空10kmの高度で飛行し外気圧は0.3気圧へ減少します。これを機内を与圧,すなわち圧力を増して0.8気圧に保っています。富士山の五合目も標高2300mの高さですので0.8気圧です。富士山山頂は3700mを越えますので0.7気圧まで下がります。こちらは人体への酸素の供給が少なくなることによる高山病になるお話です。肺に酸素を取り込むために,息を吸えではなく息を吐け富士登山の時に教えてもらいました。吐けば空気が入ってくる。そして,高山病にならないよう薄い空気に体を慣らすために,バスで到着した五合目で1時間を過ごしてから富士登山を開始することがルールとなっていました。
 飛行機の上昇時はキャビンの中の圧力が0.8気圧になり空気も薄くなるのですが,登山と違い座席に座ってほとんど動かないので,酸素消費も多くなく大丈夫ですが,着陸の時に段々機内の圧力が増してきます。先のスキューバの講習のお話で耳抜きのお話をしましたが,耳と副鼻孔 (サイナス) の中の圧力と周囲の圧力を同じにしないと激痛が走ります。方法がわからなず耳抜きができない子供がかわいそうに時々飛行機の中で泣きだすことありますね。アメをなめさすと口の動きが耳抜きにつながるので覚えておくといいです。大人も使えます。富士山山頂から下山する時に耳抜きをしたのを思い出しました。

【潜るときと浮上するときどっちが大変】
 地上の話はしましたが,今度は水中での圧力の変化は,それとは大違いです。地上での生活レベルでの圧の上昇は0.7~0.8気圧から1気圧が,スキューバダイビングでは1気圧から2気圧,3気圧,4気圧です。深度10m当たりの最初の2気圧への変化が最も大きいとお話しました。ここでキーワードがさきほどの耳抜きです。耳抜きには耳と副鼻孔の圧調整の両方を含めています。ダイビングの前日にお酒を飲み過ぎていると鼻と副鼻孔の間の管が腫れてふさがってしまうことがあります。この時は,眉間の部分が痛くて水深5mあたりから潜れません。前日の飲酒はほどほどにです。
 今度は浮上時です。浮上にしたがい周囲の圧が下がっていきます。耳とサイナスからは浮上時に自然と空気が逃げっていってくれますが,肺の方は呼吸をしないと肺の空気が膨張して大変なことになります。上昇する時は,水面方向,上を向き浮上しますので自然と気道を開ける姿勢となりますが,慌てると大変です。世の中には実験が好きな人がいて,我慢して息を止めたまま浮上したらどうなるか試した人がいました。一緒に海の実験作業をしてくれた潜水士の人で,息を止めて浮上しても止めることはできなかったそうです。合わせて吐血したそうで,危険な人体実験はやめた方がいいですね。さてもう一つの大切なポイントがあります。

【潜水病】
 潜水病です。名前は聞いた方は多いと思いますが,それは,圧が高い環境にいると空気中の窒素が血液中に溶け込みます。これが,周囲の圧が下がることで,気体の泡となって血液からでてくることで,これが脳に到達すると大変なことになります。
 ここで,問題なのがダイビングポイントからの帰りのアクセス,飛行機などでの移動では,前述のとおり機内は0.8気圧,潜水病を起こしやすく,ダイビングをした後すぐにの搭乗には注意しないといけません。特に沖縄へ潜りに行った後などで,飛行機では1回の潜水では12時間後,2回の潜水では24時間後の搭乗が推奨されています。また大瀬崎は東京からすると箱根や御殿場を越えてのダイビングスポットです。そこからの帰りは,自動車では箱根峠標高870m,御殿場標高450mを通ります。御殿場の方が安全ですが,それでも0.95気圧に下がります。ダイビングのあとお食事をしたりして現地で時間を費やしゆっくりとした帰宅が安全上大切ですね。なお,ダイビングコンピュータ (ダイコン)では,窒素バーがでて,危険を知らせてくれます。バーがでなくなってから移動しましょう。

 次回は,ダイビングで気づいた合気道のポイントについてお話します。

皆さまの「その時私は」物語のお話をお待ちしております。

企画担当 高橋達人 tatsudoc@nifty.com