合気道エッセイ その1: ⑩ 手がくっついたまま離れない

合気道エッセイ その1

 いままで解説してきた「真中」「伸張力」「重力」等の極意のポイントをマスターできると, 合気道の柔術技が合気柔術のレベルになります。
 今日はさらにその先,手がくっつたまま離れない合気動作を紹介しようと思います。合気道の技を稽古していくうちにたまたまこのように相手の手が,自分の手から離れないことが起こります。原理が分かっていれば再現できるのですが,原理を理解している人も少なく「結びが大切」などの言葉で表す先生もいます。これが自在にできると合気道のデモには最適です。合気道を知らない人にもパーティーなどで紹介すると,見ている人を「目が点」状態にすることができ,上手な手品を見た時のようにうけること間違いなしです。これをくっつけ合気と呼んでいます。相変わらず私の造語ですが,グーグルで検索できます。参考にしてくださいね。

(「くっつけ」ってなに)
 まず,「くっつけ」とは,攻撃し技を受ける人,受けが,手を離そうとしても,手を離すことができず,技を行う相手,取り(仕手,投げ)の動作に従う状態をいいます。「くっつけ」に英語では coupling を当てています。電車の連結器のように結合した状態でイメージしやすいですね。この「くっつけ」は,ゆっくり動いていても,静止状態でも「くっつけ」を維持できます。くっつけ動作くっつけ合気などの用語をここでは使います。

(手のひら くっつけデモ)
 相手の手のひらに自分の手のひらをくっつける方法です。「真中」「伸張力」「重力」を理解していないとこれは難しいです。なにせ極意動作ですので。
 まず相手に手のひらを差し出してもらい,その上に手のひらを重ねたところからスタートです。相手の手のひらに,前腕伸張力を使ってゆっくり加重していきます。ゆっくりとした重力掛けです。手のひらを重ねた位置を自己の真中に来るように誘導すると相手が感じる力が増大しますのでより有効です。手のひらに力を感じた技を受ける人,受けは「あれ すこしやばいな」「やばいな」「やばいやばい」と感じ出します。
 そして手のひらを差し出した受けは,手のひらを重ねた人,取りの動きに抵抗しようと上腕に力を入れます。これは屈筋を使いますので腕を手前に引くように,肘の内側,内肘が閉じる,クローズドになる方向での操作となります。抵抗しようとすればするほど,受けはこの内肘が閉じる動作を行うことになります。人間,びっくりしたりして恐怖心をいだき「怖くなる」と縮こまる性質があります。これも内肘が閉じる,クローズドになる方向ですね。

 受けの手のひらに直角に力を加え,受けの腕を閉じさせず伸ばしたままで維持させます。手のひらが滑ってしまう方向は,「くっつけ合気」を継続する方向ではありません。受けの手のひらに直角に力を加えることで,相手の丹田を動かす,すなわち相手の体を動かすことになります。伸張力を生かし,自己(取り)の真中で,相手の肘が閉じないようにしながら,下方,上方,前方へ導いていきます。相手は追随してきます。道場は畳ですので,追随できなければ合気道のできる人は受身をとることができますが,受身ができない人は,転んで手をついて骨折することもありますので,注意してください。パーティ会場は床が板張りなどですので,細心の注意が必要です。

(くっつけデモを見た時のまわりの感想)
 この「くっつけ合気」を初めて見る人は目を点にしながら,「え~」「そんな」「うそ~」「そんなはずはない」「こんなの八百長だ」「こんなのやらせだ」とまず思い,次いで「自分には到底できない」「でもできたらうれしい」と思います。
 合気はすべて技法 (技術)でできます。すなわち考えれば答えがあります。「くっつけ合気」ができるようになるには,合気道の技の根本原理の「伸張力」「真中」「重力」の理解と体現が必須です。「伸張力」「真中」等が十分理解できていないと途中で結合が外れてしまいます。「合気は技術」です。自分一人でくっつけ合気を試すことができます。自分の両手を使い,右手のひらと左手のひらで勝負させます。ここで述べた動きを左右の手のひらで受けと取りの両方の力を実感できます。自分の体の動きや仕組み (physical physics) に興味をもつ良い機会ですので試してみてください。

ではでは。

高橋達人 tatsuaiki7@gmail.com