わたしと温泉 その弐:お気に入りの温泉

いつも工事中

M温泉,花崗岩から造った石風呂です。

 

わたしと温泉」その弐です。

 M温泉でのお気に入りはやはり露天ろてん風呂 (open-air bath)です。この四ヶ月で三度訪問した宿のお風呂は,二つが内風呂 (内湯 indoor bath)で,二つが露天風呂,露天風呂といっても屋根があって,外の庭が見えるお風呂です。その壱の写真のヒノキ風呂も,この写真の地元の花崗岩で造った石風呂も一人でゆったりできるくらいの大きさです。本来,ラジウム温泉はラドンを吸うことで効果があるとされているので,密閉された場所の方が正しい入り方なのでしょうが,気持ち,気分がよくなるのは,やはり露天風呂の方です。雪景色の庭を覗くと,庭の池の中にじっとしている大きな鯉が数匹見えます。

ラジウム温泉の話の続き

 理系の大学を卒業したので少しは理系ぽく,かつ技術英会話的な英単語の発音を加えて話を進めていきます。一部の英単語はクリックするとYouGlishの発音を聞くことができます。なお,ネットで得た情報からのノートですので,ご自分で内容の確認をしていってくださいね。

 ラドンを一定量以上含むものは放射能泉 (radioactive spring) に分類され,「ラドン温泉」または「ラジウム温泉」と呼ぶそうで,治療に役立つものとして,療養泉 (medical spring) としてこれまた分類されています。M温泉はこれに該当します。山に降った雨が,ウラン(uranium) やトリウム (thorium) を含む花崗岩の割れ目を通過して地下水となり,地上に近いところで地熱を受け湧き出る低温の温泉が非火山性のラジウム温泉,ラドン温泉,放射能泉 です。ラジウムとラドンの関係は,ラジウム Ra 226 がアルファ崩壊によってヘリウム (helium) 原子核(α粒子)を放出し,原子番号が2,質量数が4 減少した,常温常圧でガス状のラドン Rn 222 になります。ラドン Rn 222 はさらにアルファ崩壊していきます。ラドンの寿命,半減期は 3.8日と短いです。

 同じアルファ崩壊しアルファ線を出すラジウムとラドンですが、線源を体内に取り込むには,水に溶け込むだけの固体のラジウムより,水にも溶け,かつ呼吸により体内に取り込める気体のラドンの方がラジウム温泉での主役のようです。

 ラドンガスは結構,水にとけ,より低温の方が溶け込みやすいので,温泉も高温よりぬるい方がおすすめです。M温泉でも,4つの温泉の内,内風呂の一つを「ぬる湯」としてお風呂の温度を38°C前後の低めに設定しています。水温が37〜38度以上になると空気中にラドンが逃げ始めるのでかなり微妙な設定です。他の三つの温泉は普通の温泉らしく40~41°Cです。もともとの源泉の温度は25.3度と低く,これを温泉として加温して四つの温泉に用いています。

アルファ崩壊 (alpha decay) では,ヘリウム He (helium /ヒーリァム/) の原子核が高速で飛び出します。飛び出したアルファ線 (alpha ray) の透過力は貧弱で,空気中を進めるのはたかだか数cmで,紙一枚でもアルファ線を遮断することができます。一方,体内では数10μm程度ですから影響が及ぶのは極めて狭い範囲に限られます。体内に取り込まれた場合,放射性同位体 (radioisotope) 近傍のみに影響をもたらします。
参考:【なぜ放射線はわかりにくいのか (その1)

  次に,もう少しラドンについて見ていきます。

ラドンとは

 ラドンは,化学的に安定な不活性ガス (inert gas) の貴ガス (noble gas) ※※ で,無色無臭,常温常圧では単原子分子の気体,沸点は -62°Cです。ラドンガスの比重,気体の比重とは,同じ温度・圧力での空気の密度との比のことです。空気の密度は1mol「風が吹く(29)」と覚えましたよね。ラドンは比重7.7ですので空気の7.7倍の密度を持ち,空気に比べかなり重たいガスで,温泉でも空間の下方にどよんとたまることがわかります。ラドンは水に溶けやすく,具体的に 20℃では,100mlの水に約22.2mlも溶け込みます。これは水に対する溶解度としては他の貴ガス元素と比較してかなり高いです。そのため,ラジウムから変化する過程で生成されラドンは,この水に溶けやすい性質があるため,地下水や温泉水に存在することなり,これがラジウム温泉,ラドン温泉となります。ラドンは,前述のようにラジウムと違い固体ではなく気体なので,空気中にも水中にも存在できるところが,優れたところです。かつ気体として呼吸をすることで肺から血液中に入り全身に運ばれ,ラドンが溶解した源泉水 (hot spring water) を飲むことで消化器系にも働きかけます。

※※ ガスnoble gas)は 2005年までは ガス (rare gas) と呼ばれていました。日本の教科書では 2021年から変更になったようです。発音は,技術英会話メールマガジン:希ガス (貴ガス) の発音です https://ceramni.matrix.jp/?p=10587 で聞いてくださいね。

 次は,ラドンの温泉効果について見ていきます。

ラドンの温泉の効果

 ラジウム温泉,ラドン温泉は,別名,放射能泉です。日本人にとっては少し怖い名前です。ここでは温泉としての効果を見ていきます。塩は人体に必須でも塩を多量にとると大変なことになります。放射能も同様で,多く浴びると致死量になりますが,ごく少量であれば効果を発揮します。NASAの研究で,宇宙飛行士は地上の人に比べ数十倍の量の放射線を浴びていますが,無重力で筋力が衰えるもののそれ以外の機能はすべて向上したと発表しているそうです。1980年代の話です。日本では三朝温泉の近くに住んでいる人のがん死亡率は全国平均の半分という結果もあるようです。この辺はネットにでていますので,調べてくださいね。

 ラドンによる被ばくの量ですが,生活で自然界からうける放射線量は,年間2.4 mSv (ミリシーベルト),一方,ラジウム温泉に毎日1時間,1年間365日入浴したとして 0.4 mSvとのことです。健康診断で行う胃のバリウム検診が,15~25 mSv なので,温泉でのラドンの被ばく量がかなり低いことが分かります。積算 200mSv未満なら健康に問題を起こさないとされているようです。

 アルファ崩壊して発生するアルファ線が治療に役立つのですが,ラドン Rn 222 はアルファ崩壊による放射線の透過力は貧弱なので,皮膚からのアルファ線による効果は期待できません。効果を出すためには,アルファ線を発生するものを体内に取り込まないといけません。

 温泉に溶け込んでいるラドンは脂肪に溶けやすく皮膚から吸収されそうですが,やはりガスとしてラドンを呼吸で体内,肺に取り込む方が圧倒的に有利で,温泉で呼吸によって取り込まれるラドンの量は体内に取り込まれる全体の9割とのことです。また体内に入れる方法として,ラドンが溶け込んだ温泉水,ラジウム泉を飲むこと,飲泉 いんせん によって,直接胃腸に働きかけることができます。

 肺に取り込んだラドンは,血液内に溶け込み,心臓のポンプ作用で50秒かからず全身の隅々に巡ります。肺に残ったラドンは呼気で排出され,血液の中に溶けたものは尿から排出していきます。体内に入った放射性物質を含め取り込まれた物質が,代謝や排泄などの生物学的過程で半分になる時間を生物学的半減期と言いますが,ラドンは40分程度だそうです。

 そして,体内に入ったラドンが崩壊する際に放出されるアルファ線が,細胞や組織に刺激を与え,本来持っている免疫力を引き出すと考えられています。血液に溶け込んだラドンの場合,アルファ崩壊するとその影響は血管壁内にとどまる一方,血液中の白血球への刺激となります。

 この辺,メカニズムはかなり面白いです。興味のある人はネットで調べてくださいね。地下水中に溶解している固体であるラジウムが,アルファ崩壊でラドンとなって温泉の湯から直接皮膚へ,また温泉から気体となって放出されたラドンが人の呼吸により肺に入り,それが血液に溶け込んで全身にまわり,かつ排出されていくところがラジウム泉のポイントかと思います。

ではでは。

高橋達人 (たかはし たつひと) tatsudoc@nifty.com