技術英会話エッセイ: 母国語だけで大学を卒業できる素晴らしく幸せな日本

 英語がお上手な人はパスしてくださいね。

 「日本人はなぜ英語をしゃべれないのか」よりも,少しでもプラスのイメージで「母国語,すなわち日本語だけで大学を卒業できる素晴らしく幸せな日本」の方がよいかなと思って題名を変えました。今日はやる気のでる,元気のでる話をしたく思います。「なぜ,日本人が英語をしゃべれないのか」の理由を知るとやる気と元気が出ます。そして英会話を勉強する気になります。

 日本のTOEFLのアジアでの順番(2017年)をご存じですか,1位 シンガポール,2位 インド,3位 パキスタン,4位 マレーシア,5位 フィリピン,6位 香港……と続きます。そして日本は29ケ国中ビリから3番目です。OECDの国の中では,はっきりいってビリです。「なぜ?,なぜ??」と思いませんか。

 東工大の学生は英語の読み書きができます。自分の研究を進めるにあたって,関連する海外の論文を読まないといけません。修論を英語で書く人もいます。でも先生との普段のやり取りや,指導はすべて日本語,生活するのも日本語です。留学生や海外出身の先生が研究室にいれば別ですけど,英語の論文の読み書きができれば英会話とは縁がありません。他のアジアの大学ではどうでしょうか。大学の図書館の蔵書で英語で書かれた蔵書の割合を調べてみるといいです。英語圏以外の海外の友達がいたら,大学の図書館での英語の本の割合を聞いてみるといいです。日本では,ほとんど95%以上が日本語で書かれた本と思います。

 明治の人が,海外の言葉をほぼことごとく日本語にしてくれて日本漢語/和製漢語を作ってくれました。戦後はカタカナ語をつくることで,また日本語を増やしてきました。そのおかげで,英語ができなくても日本語だけで大学を卒業できるのです。特に日本で7割を占める文系や一部の理系ではそう思います。なぜ日本人は英語が話せないのかの答えは,話す必要がない。自分の周りに普段英語をしゃべる人がいれば別ですが,ほとんどの人が海外の人と会話でコミュニケーションする環境にありません。

 ただし,読み書きに関しては,アラビア語など他の言語と異なり,必要となれば英語の論文は辞書を使って読むことができる。頑張れば論文を書くこともできる,これは素晴らしいことです。日本での英語教育は間違ってはいないのです。

 アジアでは,フィリピンのように小学校から母国語の授業以外,他の科目は英語で勉強します。なぜなら科学などの用語が母国語にないからです。英語で勉強せざるを得ないのです。図書館に英語で書かれた書籍が多い理由です。毎日が英語を使った学習だからTOEFLでも高ランキングとなるのです。

 日本人で英語が必要な人の割合は 1割程度,その必要な英会話ができる人の数は1~2%とのことです。皆さんはこれからの仕事で英語が必要な人の中に入ります。すでに英語の読み書きができるベースはあるのですから,技術英会話を通しポイントを押さえて英会話をものにしてくださいね。

 そうそう「英語ができない」というのは,実は「英会話ができない」というのが正しいですね。

ではでは。

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無機材会 企画担当 高橋達人 tatsu.english@gmail.com

技術英会話: グーグルで「技術英会話」と「”」「”」で囲って検索すると,検索結果の1番目,2番目に筆者の「技術英会話」がヒットします。技術英会話はそれほどレアです。

筆者: 高橋達人 (たかはしたつひと)  大学時代の英語は東工大の学生レベル,30代前半で英語が不得手にもかかわらず米国の大学院へ会社派遣留学。真面目に勉強して1年半で修士卒業。会社生活の最終ステージで 6 年間豪州の現地会社に勤務。海外では勉学や仕事のかたわら合気道で体を動かし,現在は豪州,フィリピン,カンボジアで合気道を指導。
東工大 無機材会 企画担当副会長