技術英会話エッセイ: 母国語だけで大学を卒業できる素晴らしく幸せな日本 その2

 英語がお上手な人はパスしてくださいね。

 「母国語,すなわち日本語だけで大学を卒業できる素晴らしく幸せな日本」のところで,「なぜ,日本人が英語をしゃべれないのか」の理由を気づかせてくれた日本漢語/和製漢語のお話をしました。この日本漢語/和製漢語を知ったのは,加藤誠軌先生の「都市工学をささえ続けるセラミック材料入門 (2008)」の中です。

 「日本漢語のおかげで,我々は日本語だけで大学を卒業できます。開発途上国ではこのような環境は整備されていません。」ということで,逆に英語で自然科学から数学,物理,化学まで英語に触れる機会が大学卒業までなかったということです。ある意味,日本人に生まれて幸せですが,頑張って英語を習得しないと世界を乗り切れません。

 一方,中国との間で,中国語ができなくても,漢字を用いて筆談ができるのはこの「日本漢語」のおかげです。中国国内には多数の話し言葉があり,やはりコミュニケーションの基本ツールは文字の漢字でした。今から1200年前,弘法大師となる空海が日本から中国に遣唐使として渡った時に遭難し着いたのが福建省でした。でも漢字のおかげで無事,目的地の西安にたどりつくことができました。漢字の力はすごいですよね。

【日本漢語】  [加藤誠軌著 都市工学をささえ続けるセラミック材料入門 p10 アグネ技術センター(2008)]
 明治の開国とともに横文字が氾濫しましたが,民衆は意味をよく理解できませんでした。福沢諭吉や西周あまねなどの 洋学者が明治初期に西洋の学術用語を漢字の熟語に翻訳したことは,漢字の素養があった当時の人々に理解させるのに極めて有効でした。
それらを「日本漢語」といいます。
たとえば,文明,哲学,宗教,自由,司法,人権,理想,個人,主義,概念,客観,共和,共産,人民,思想,義務,民族,原理,現実,会話,計画, 信用,方針,経験,新聞,心理,教育,演説,幹部,切手,交通,資本,金融,投資,場合,宇宙,進化,自然, 科学,実験,物質,数学,工学,技術,鉄道,窯業,陶器,鉛筆,男性,女性,君,僕,彼女,○○的,○○論,○○性,○○式
などなどです。
 翻訳されたこれら学術用語の多くが,中国語に移植されて現在も使われています。中国の社会科学に関する語彙の60-70%は日本漢語だということです。中華人民共和国政府と書けば,中華以外は日本漢語です。

 すごいですね。科学技術の用語は90%以上がこの日本漢語だそうです。日本からの最大の輸出品ですね。一方,すぐお隣の国は,同様に日本漢語を取りいれてその割合は8割以上だったそうです。1970年に漢字を廃止して残念ですね。

 このように,明治の人が海外の言葉をことごとく日本語にし,戦後はカタカナ語をつくり日本語を増やしてきたおかげで,英語ができなくても日本語だけで大学を卒業できるのです。素晴らしいですね。
 ですから,大学を卒業したあとは技術英会話を使って頑張って英会話をものにしましょうね。

ではでは。

 技術英会話エッセイ 目次  https://ceramni.matrix.jp/?p=1582

 技術英会話メールマガジン 目次 https://tatsuaiki.sakura.ne.jp/wp/archives/1619

無機材会 企画担当 高橋達人 tatsu.english@gmail.com

技術英会話: グーグルで「技術英会話」と「”」「”」で囲って検索すると,検索結果の1番目,2番目に筆者の「技術英会話」がヒットします。技術英会話はそれほどレアです。

筆者: 高橋達人 (たかはしたつひと)  大学時代の英語は東工大の学生レベル,30代前半で英語が不得手にもかかわらず米国の大学院へ会社派遣留学。真面目に勉強して1年半で修士卒業。会社生活の最終ステージで 6 年間豪州の現地会社に勤務。海外では勉学や仕事のかたわら合気道で体を動かし,現在は豪州,フィリピン,カンボジアで合気道を指導。
東工大 無機材会 企画担当副会長