秋バラが咲いている
天気が良いので秋バラの咲く公園に出向いた.初夏の開花に比べれば華やかさは劣るが花ざかりである.
日本にはノイバラやハマナスなどの原種が自生している.コウシンバラ,モッコウバラやナニワイバラは中国原産のバラである.コウシンバラは四季咲きで,原種は一重だが八重咲への品種改良が古くから行われていたらしく,平安時代には既に日本に渡来していたと考えられている.
バラは観賞用だけではなく,花弁から香油を抽出して香水の原料にも利用されてきた.中東原産のダマスクローズは香料としても古くから用いられていたが,十字軍の時代に中近東のバラがヨーロッパに導入され,大航海時代になると中国や日本のバラが持ち込まれると交配が進んでさまざまなバラが作られた.とくにフランスではバラの品種改良に熱心に取り組み,さまざまなオールドローズを作出した.マリー・アントワネット(ルイ16世の皇后)やジョゼフィーヌ(ナポレオンの皇后)がバラ愛好家だったので需要があったのだ.今日では新たな園芸品種が続々と開発され,多くの品種が特許切れに伴って廃盤となっている.
公園のバラはいずれも園芸品種だ.さまざまなバラ属の原種をもとに人為選択によって作られた雑種であるから,品種名はあっても種名はない.
ホモ・サピエンスは20万年ほど前のアフリカで誕生したと考えられている.7万年頃前にアラビア半島を経てユーラシア大陸に進出し,その後オーストラリアやアメリカ大陸にも住みついた.しかし,中東ではネアンデルタール人と混血し,アジア内陸部でデニソワ人と混血したとされているから,アフリカの黒人を公式なホモ・サピエンスとすれば,それ以外は種名のない雑種となる.出アフリカを経験したヒトをバラになぞらえて命名すれば,ヒト類よりヒト属の雑種がふさわしい.
(岡田 明)