講演会の開催レポート 「アートと材料」~東京科学大学で窯業・民藝を考える~
標記講演会(講師:佐々風太氏*)が 2025年1月25日(土) に東京科学大学・大岡山キャンパスにて開催され、オンラインでも同時配信された。参加者は、無機材会のOB/OG会員の他、物質理工学院 材料系無機材料分野、環境・社会理工学院、リベラルアーツ研究教育院の学生/院生と教職員の方々で、現地会場とオンライン会場を合せて50余名の参加があり、現地会場では、講演会終了後に軽食が提供される懇親会が開催され、異分野の交流にとって良い機会となった。
講演では、「民藝」(民衆的工藝) という表現(語)の創案から、その概念が熟成するに至るまでの過程が、材料・技術との関係にも触れつつ、多くの資料を引用しながら分かり易く説明され、これまで「民藝」に関心が薄かった人には一通りの理解が得られる機会となり、関心があった人にはさらに深い知識が得られる機会となった。濱田庄司が板谷波山に師事し、その後、思想的に離れるまでの経緯も、その作品を見比べてみると納得のいくものがある。芹沢銈介が卒業した「工業図案科」が、東京高等工業学校が大学に昇格(1929年 東京工業大学)する際に切り離されてしまったことは、今となっては残念と言わざるを得ない。なお、この件については当ホームページの「田町キャンパスの記念碑を巡る」(歴史と史跡とエトセトラ) に詳しい説明がある。

(*)佐々風太:東京工業大学 環境・社会理工学院 博士課程修了、博士(学術) 。現在、東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院 特別研究員。
〔参考1〕講演会の開催案内 「アートと材料」~東京科学大学で窯業・民藝を考える~
(https://ceramni.matrix.jp/?p=14910)
〔参考2〕研究誌『余白』vol2 (2024年3月発行) ~ 特集「東工大と民藝」~ は、東京科学大学・中島岳志研究室のサイト(https://nakajimalab.studio.site/yohaku/vol2)でpdf ファイルを入手することができます。
以下の名前をクリックすると、Wikipediaのページにアクセスできます。
〔参考3〕柳 宗悦:東京帝国大学文科大学・哲学科 卒業、民藝運動の思想的な支柱
〔参考4〕河井 寛次郎:東京高等工業学校・窯業科 卒業(人間国宝・文化勲章ともに辞退)
〔参考5〕濱田 庄司:東京高等工業学校・窯業科 卒業、板谷波山に師事(人間国宝1955年、文化勲章1968年)
〔参考6〕島岡 達三:東京工業大学・窯業学科 卒業、濱田庄司に師事(人間国宝1996年)
〔参考7〕芹沢 銈介:東京高等工業学校・工業図案科 卒業
〔参考8〕板谷 波山:東京高等工業学校・窯業科 嘱託(文化勲章1953年)
以下は、講演会で事前配布された資料からの抜粋です。詳細は、無機材会講演_20250125.pdf を参照下さい。(← クリックでダウンロードできます。)



左から:濱田庄司、柳宗悦、河井寛次郎、島岡達三、芹沢銈介の各氏。




左から:河井寛次郎、濱田庄司、島岡達三、芹沢銈介の各作品。




左から:板谷波山、板谷波山の葆光彩磁花瓶、イギリス時代の濱田庄司、イギリスのスリップウェアと瀬戸の石皿
(久保寺正二)