日本セラミックス協会の記念表彰

日本セラミックス協会が2021年10月10日に創立130周年を迎え,これを記念して10年毎記念表彰が行われた.各支部や教育委員会からの推薦によるものに加えて,会員歴が50年以上のものには特別永年継続会員賞,40年以上で50年未満のものには永年継続会員賞が授与される規定である.

10年前の2011年の創立120周年では特別永年継続会員賞が66名,永年継続会員賞は143名であったが[1],今回の創立130周年では特別永年継続会員賞が81名,永年継続会員賞は194名といずれも大幅に増加している[2].日本セラミックス協会の会員数は4,730人(平成30年3月31日現在)だが,そのなかで個人会員は3,192人なので[3],個人会員の約8.6%がどちらかの賞を受賞したことになる.

受賞者には感謝状と記念品が贈られる.永年継続会員賞の記念品は大倉陶園の皿であった.当然のことであるが,受賞者には無機材会会員の多くが含まれている.

10年前の受賞者に比べて,特別永年継続会員賞は23%,永年継続会員賞は36%の増加である.永年継続会員賞の急増は明らかに40年ほど前に起きたセラミックフィーバーの余波であるが,特別永年継続会員賞の増加はセラミックブームの前なので,医療技術の進歩以外の原因は特定しにくい.

セラミックフィーバーはもともと耐熱セラミックスを利用して高温作動するガスタービンエンジンを開発し,発電や自動車エンジンに応用しようとする狙いがあって始まったものだ.それが自動車用のレシプロエンジンをセラミックスで製作しようという話に差し替えられ,その市場規模が極めて大きくなるとの期待を込めた予測が輪をかけた.

割れやすいことで知られるセラミックスを構造材料に応用しようというのは常識外れの試みであったから,美術工芸品でもある伝統的な陶磁器との差別化を図って,この構造用セラミックスには新たな名称が与えられた.ファインセラミックスである.ファインセラミックスは日本語だが,英語のFine Ceramicsは美術的価値のある陶磁器であるから,この2つは似て非なるものであった.

セラミックエンジンの開発では窒化ケイ素や炭化ケイ素などの非酸化物系セラミックスが注目された.20世紀は無機材料分野に新たな物質が次々と登場した時代であった.スピネルフェライトは1930年代,チタン酸バリウムは1940年代,バリウムフェライトやPZTは1950年代に発見された.1950年代にはゼネラル・エレクトリック(GE)社が超高圧下でのダイヤモンド合成に成功し,コーニング社のStookeyは結晶化ガラス(パイロセラム)を発明した.1960年代にはGE社のCobleが透光性アルミナを開発し,高圧ナトリウムランプとして商品化された.

このように無機材料の分野では,構造用セラミックスの研究開発に先立って,さまざまな技術革新が既に進んでいたため,それに触発されて関心が高まり,日本セラミックス協会への入会者が増えたことも特別永年継続会員賞増加の一因ではないかと推測される.ちなみに,日本セラミックス協会への入会は古い話なので記憶もおぼろげであるが,佐多敏之先生に引率されて百人町まで出向き,その場で申込書に書き込んだようだ.

文献
1) セラミックス,46 [10] 827-830 (2011).
2) セラミックス,56 [10] 647-651 (2021).
3) https://www.ceramic.or.jp/csj/gaiyo/n_gaiyo.html

(永年継続会員賞 岡田 明)

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