武蔵府中熊野神社古墳と多磨霊園などに立ち寄る
近隣の遺跡を探訪しても,多くは石碑や解説板が設置されているだけで建造時の姿を留めているものは少ない.遺跡の多くはかつての建築物の土台が発掘調査で掘り出された遺構で,調査終了とともに埋め戻されるか破壊されるかのいずれかだ.そのため発掘が終わってから現地に出向いても,開発によって完全に消滅したものや,石碑や解説板で遺跡がかつてその場所の存在したことを示すものが大部分だ.
一部の遺跡については復元されて建造時の姿を偲ぶことができる.復元された住居跡や築造時の姿に復元した古墳などだ.長野県の森将軍塚古墳,兵庫県南部の五色塚古墳,奈良県の藤ノ木古墳,高崎市の保渡田八幡塚古墳などが復元された古墳の代表例だ.
武蔵府中熊野神社古墳は上円下方墳だ[1].2003年に発掘が始まり,自然の小山と見分けがつかなかった古墳は葺石や貼石が表に出た姿に復元され,現在もそのままの姿が残されている.古墳全体の中心軸は磁北に近い方向を示し,真北から西へ7度傾いている[2].築造は武蔵国に国府が置かれる直前の7世紀中頃と考えられている.この頃,関東地方では前方後円墳は消滅し,円墳や方墳が出現するが,南武蔵地域では特殊な形態の古墳が見られることが他地域とは異なる特色だ.確かに地上に降りたUFOさながらの形態だ.遺物は敷地内の古墳展示館にレプリカが展示され,その隣にある石室復元展示室には復元されたレプリカの石室がある.
武蔵府中熊野神社古墳から約5km東にある多磨霊園には多くの著名人が眠っている[3].さまざまな墓石が見られるが,復元された古墳にかなうものはなさそうだ.
さらに1km東には調布飛行場があって,プロペラ飛行機の発着を付属のカフェから眺めることができる.そしてグライダーやヘリコプターが置いてある格納庫へも接近可能だ.カフェは警備が厳しい.警備員による入場チェックがあって,空港用地立入カードに記入しなければ入店できない.
武蔵府中熊野神社古墳には駐車場がなく訪問は不便だが,訪れる人が少ないのはコロナ禍において3密を避けるのに好都合だ.カフェも気軽に立ち寄る人は少ないだろうから,人と人との間隔を大きく取ることができる.これもコロナ禍における配慮の1つのようだ.
文献
1) 国史跡武蔵府中熊野神社古墳展示館
https://imatama.jp/contents/tokuhain/fuchu/kokusimusasihfuchu/
2) 国史跡武蔵府中熊野神社古墳
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/kirari/sagasu/theme/muryou/kumanoginzyakohun.html
3) 歴史が眠る多磨霊園 http://www6.plala.or.jp/guti/cemetery/list.html
(岡田 明)