防備をほぼ固めて散歩に出かける

食べ物や飲み物の賞味期限は品質が変わらずにおいしく食べられる期限,消費期限は安全に食べられる期限だ.いずれにしても期限切れの食品を販売することはない.期限が近づけば値引き販売が定石だ.しかし,家庭に保管して期限切れとなった食品を食べるか食べないかは自己責任だ.

薬局で販売される医薬品にも使用期限がある.使用期限の切れた医薬品は使用しないのが原則だから,使用期限の切れた医薬品を販売することはない.しかし,家庭に保管して期限切れとなった医薬品を使用するかどうかも自己責任だ.

さて,インフルエンザの予防接種で使用期限の切れたワクチン接種を受容する人は変わり者だ.料金を支払う対価として適切に保管され使用期限内の有効なワクチン接種を希望するのが正常な行動だ.病院が仕入れた医薬品が使用期限切れとなってしまったら,それを顧客に接種して料金を徴収しようとするのは無理な相談だ.

しかし,行政による無料の接種だったらどうだろうか.しかも,有料接種の選択肢がない場合だ.接種を受けるのは顧客ではない.行政はベンダーからすでにワクチンを購入済みだが,消費せずに使用期限切れを迎えた場合だ.理論的には使用期限の切れたワクチンを使用するかどうかは行政の自己責任だが,接種希望者には使用期限内のワクチン接種を受ける選択肢はない.ワクチン接種希望者の選択肢としては,使用期限の切れたワクチンを接種するか接種しないかの2つしかないのだ.追加料金や賄賂を支払って使用期限内の安心できるワクチン接種を受けることは,普通はできないのだ.

3回目となった新型コロナのワクチン接種では,このような厳しい選択を迫られた.1回目と2回目のワクチン接種はファイザー製だったので,交差接種によって効果を高められるモデルナ製を希望したいが,接種券の届いたときには2回目の接種から既に6ヶ月以上経過し,医学的には免疫が低下している時期だった.ネット検索で予約しようとしてもモデルナ製のワクチン接種はかなり待たねばならず,2回目の接種から9ヶ月の間隔があいてしまう.ファイザーなら間隔は8ヶ月で接種可能だ.

既に免疫が低下しているのだから,効果が高くても接種時期が遅れるより,効果が低くても時期の早い方がよい.そう考えてファイザー接種を予約したら,実は期限切れワクチンの接種だったことが接種直後に判明したのだった.しかも,1回目のワクチンは製造後82日目,2回目は108日目の接種だったと推定されるが,3回目は最終有効年月日の184日目を12日も超えた196日目の接種だった.恐らく,このロットのワクチンは11月頃に接種されるはずだったのが,消費されることなく在庫となり,使用期限を超えてしまったようだ.

予想されたオミクロン株の蔓延に備えて,使用期限前の11月から12月に3回目の接種を行っていれば,多くの犠牲者は死なずに済んだはずだ.国内ではデルタ株の自壊によって感染者が激減したとしても,世界ではコロナが猛威を振るっていたのだから,新たな株が侵入して患者が急増することも想定内のことだった.通常時ではないのだから,手持ちの在庫を有効活用して期限内に消費し,接種券などは不要として希望者には早急に接種すれば,犠牲者は死なずに済んだのだ.1回目と2回目のワクチン接種の記録を持参するだけでも,接種はさらに効率的に進んだはずだ.菅義偉と河野太郎が努力して入手したワクチンを有効活用できなかったのは何故だったのだろう.

閑話休題

3回目のワクチン接種は第1希望のモデルナ製の早期接種はかなわず,第2希望の使用期限内で安心できるファイザー接種の希望もかなわなかった.しかし,期限切れで品質には疑問があるとは言え,曲がりなりにもブースター接種を受けたので,コロナ対策は万全で安心とは言えないだろうが,一応は限られた選択肢の中から最善を選択したようだ.

さて,免疫力が低かった第2回の接種後6ヶ月から8ヶ月の期間中には行動自粛以外の選択肢はなかったが,陽気も良くなったことでもあるので散歩に出かけよう.行き先は,温故知新,いにしえの世界だ.目的達成を目指して進むのなら,現在はそのための手段を粛々と履行するのみだが,過去に起こったことが原因で現在の結果に至ったのならば因果応報,その原因を知りたいと思うからだ.野望を遂げようとする策士ではなく,ただの知りたがり屋の行動だが,PDCAサイクルのなかでは,次の飛躍のための準備期間に相当する段階だ.

(岡田 明)

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