豊橋さんぽ(No.3 豊川)

 早いもので2024年も3月になりました。英国のことわざに"March comes in like a lion and goes out like a lamb."という表現がありますが、今年はまさにそのことわざ通りに荒れた天気も多くて散歩が出来ない日も何日かありました。しかしこのことわざを信じ、今後は静穏な散歩日和の日々が訪れるものと期待しています。冬の散歩は風との戦いでもあるのですが、今は豊橋市が設定している”健康の道”の中の一つのコースを中心に散歩しています。そのコースは旧東海道と豊川及び豊橋公園を巡るのですが、私にとってコースの一番のハイライトは豊川にそった遊歩道です。そこで今回は、皆さんにあまり馴染みのない河川である”豊川”について紹介します。

 豊川は一級河川で、北設楽郡設楽町にある海抜1152 mの段戸山がその水源です。この川は北設楽郡から新城市、豊川市、そして豊橋市を流れて三河湾にそそいでいます。河川の長さは約77 kmで、流域面積は約724 km2ですので、それほど大きな川ではありません。全国にある162の一級河川の中でBOD平均値が20位ですので、水はかなり綺麗な川です。そのお陰で東三河地域の大部分の自治体がその恩恵を受けています(ときには水害をもたらす弊害もありますが)。一方、この流域から少し外れている豊橋市の南部地域や田原市などの渥美半島には大きな河川がなく、水利が悪いため、農作に不敵な地であり、かつ、度々日照りの被害がありました。このような背景から、豊川水系の上流域にダムの建設がすすめられ、1969年には渥美半島の先端まで豊川用水が引かれました。この用水は、農業用だけでなく、水道用水、工業用水にも利用され、豊橋市、田原市と静岡県の湖西市がその恩恵を受けています。この用水により、豊橋市と田原市は葉物野菜を中心とした農産物の一大産地になっています。豊橋市にはこの他に豊川用水よりも前から三河湾の埋め立てにより造成された神野新田への農業用水、通称牟呂用水もあり、こちらは市街地の中を流れています。

散歩コースである豊川の遊歩道と豊橋(とよばし)。背景の山は蒲郡市の山並み。

 散歩コースの豊川の遊歩道からは冬の季節にはカモ、カイツブリ、カワウ、シラサギなど様々な水鳥がみられます。その他、場所を選ぶと弓張山地の低くなったところから下の写真に示したように雪山が見られます。これらの雪山は南アルプスの光岳(てかりだけ)の辺りと思われますが、当初は雲の見間違いかと思いました。ネットで検索したところ、多くの人がこれを認識していて、望遠レンズを使って鮮明な写真を投稿しているケースのあることも分かり(例えば、https://waoblog.exblog.jp/32477437)、意を強くしています。また、前回少し紹介しました吉田城もこの川を北側の守りとする位置に築城しています。

豊川の遊歩道から見える南アルプスの雪山。右側が光岳か。

 豊川はかなり傾斜が強い山間地から豊橋市付近で平野部にその水が流れ込んでいるため、古くから下流域では水害が頻発していたようです。このため、洪水の際にはその堤防の切れているところから調整地に水を誘導して堤防を守るような先人の工夫である”霞堤”が造られていました。私の散歩コースにもそのような調整地が見られます。また、水量が豊富であることから橋が架け難く、豊橋市の牛川地区と対岸の大村地区を結ぶ市道には、橋ではなく渡し舟(市営)が設けられているところがあります(昨年の水害で船が流され、先日やっと復旧したとのこと)。街の中心からそれ程離れていないところですが、いつもの散歩コースから少し足を延ばすと下の写真のように閑静な豊川の風景が見られます。                         (岡田清)

豊橋市の市道”牛川の渡し”で、左側が牛川、右側が大村地区。



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