長谷川等伯の「松林図屏風」(よちよち歩きの博物館めぐり:その1)
国宝「松林図屏風」(本館2F 国宝室)
東博(東京国立博物館)の正月の出し物といえば、長谷川等伯の「松林図屏風」である。「松林図屏風」は 東博が保有する日本画の国宝21点のうちの一つで、数年前から正月のメイン展示として 本館2Fの国宝室(第2室)に展示されるようになった。東博には狩野永徳の「檜図屏風」や雪舟の「秋冬山水図」のような正月展示に相応しい国宝があるにも拘わらず「松林図屏風」が展示されるのは、「松の内」という言葉もあるように「正月には松」という日本人の感覚を踏まえたものと思われる。
今年は1月2日から13日までの12日間の限定で国宝の原画が展示されたが、それに併せて、2024年12月3日(火)~2025年2月24日(月)まで、本館1F(特別3室)に「綴プロジェクト」により作成された高精細の「松林図屏風:複製」が展示されている。また、東洋館のB1Fにある「ミュージアムシアター」では、2025年1月2日(木)~2025年4月20日(日)まで「国宝 松林図屛風 -乱世を生きた絵師・等伯-」と題した作品を上演しており、シアター入口には、これも高精細の「松林図屏風:複製」が展示されている。面白いのは、前者は「原画の現在の状態を可能な限り正確に写しとった」ものであり、後者は「制作当時の状態を可能な限り再現した」ものである点である。今年はこの3点を一度に見ることができたが、できれば3点を同じ部屋に並べて見てみたいものである。(因みに後者の複製画は、限定10点で一般向けにも販売されているとのこと。自宅の広さと手持金の額に余裕のある方は、購入を検討してみては如何だろうか。)
松林図屏風 左隻:拡大表示はこちら⇒ e国宝「松林図屏風」
松林図屏風 右隻:拡大表示はこちら⇒ e国宝「松林図屏風」
「余白の中に風景が立ち上がり、作品が躍動する」(東京科学大学リベラルアーツ研究教育院 中島岳志研究室発行 研究誌「余白」より) ― この言葉のとおり「松林図屏風」は、「余白」に空気(冷気)の存在を感じさせる、日本の水墨画の極致を示す一品と云えよう。
~ 今回のおまけ ~ 今年は巳年ということで、1月2日(木)~26日(日) まで 本館2Fの特別1室・特別2室で、特集「博物館に初もうで ― ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!― 」をテーマに、ヘビにちなんだ美術品が一堂に集められ展示されている。この中で面白かったものを一つご紹介しよう。ヘビの「自在置物」である。実物(の自在置物)と併せて、文化財活用センターで製作した「動く複製」が展示されている。
自在蛇置物(東博 収蔵品)
・自在蛇置物(文化遺産オンライン)
・へびを自在に動かしてみた(文化財活用センター)
・動いている様子はこちら(文化財活用センター)
・東博 2025年 巳年展示 2025年1月2日(木)~26日(日)
〔追記〕特に美術に造詣があるというわけではありませんが、退職後に国内外をあちこち旅をするようになって各地の博物館・美術館や寺社に立ち寄ってみると、思わぬ美術品にお目にかかることがあります。そのようなものの幾つかについて、思い付くままに綴って行こうと思っています。ご興味のある方は、ときどき覗きに来て下さい。
ご存じない方もいらっしゃるようなので、ついでに東博・本館裏の庭園もご紹介しておきます。季節の折々に庭園を散策するのもよろしいかと。⇒ 庭園Map/pdfファイルのダウンロード
(久保寺正二)