東工大のセラミックスの祖 ワグネル先生(1)
1966年卒 安田榮一
東工大のセラミックスの開祖であるワグネル先生(Dr.Gottfried Wagener, 1831~92)を記念して35回まで続いた「ワグネル記念講演会」の最終回が開催されてから20年が経ち、ワグネル先生をご存知ない方が居られるのではと、師の生い立ちから業績、並びにお墓と記念碑について、3回に分けて掲載することにしました。
まずは、歴史からと言うよりも現在目に出来る情報から話を始めましょう。
2023年の東工大のホームページで「ワグネル」と検索すると183件ヒットします。しかし、トップに出てくるのは2016年の東工大ニュース「G.ワグネル関係資料が日本化学会「化学遺産」に認定」で、2頁目に漸くワグネル先生の業績が「東工大基本情報・ものつくりのこころ =「東工大の伝統/ワグネル博士と工芸の近代化・陶磁」(1) で紹介される、と言った具合で、ワグネル先生が忘れられつつある事を実感する。
2016年に道家達将先生からワグネル先生のお墓が無縁仏になりそうなので、調べるようにとの連絡があった。まずは、Dr.G.Wagener先生の墓所がある青山霊園に行ってみた。一番近い駅は銀座線の外苑前で、墓所まで徒歩で7分程度。外人墓地はその中央、G.ワグネル先生の墓所はまたその中央の南1-イ区8側55/56にあった。墓碑には彼が創始した釉下彩技法による美しいレリーフが施されている(右の写真:2016年撮影)。この外人墓地は、幕末から明治大正にかけて来日し、高給で雇い入れた外交官、技術者、法律家、医者、宣教師、教育者等、主に欧米諸外国からの外国人が眠っている。外人墓地以外には、大久保利通、犬養毅、池田勇人、忠犬ハチ公、北里柴三郎、市川団十郎、小林麻央他の有名人が眠っている。お時間があったら散歩がてらお参りして頂けると先生もお喜びになられるのではないでしょうか。
大震災や大戦で損傷したワグネル先生の墓は、1980年の没後90年に「日本セラミック協会」によって修復され、護持会費も払い続けられており、道家先生の問合せの無縁仏は杞憂であったようである(2)。日本セラミックス協会には感謝、感謝です。
ワグネル先生の記念碑は大岡山キャンパスの旧原子炉研の前の瓢箪池の上に立っている。昭和12年(1937)に建立されたもので、外装にはテラコッタが用いられ、中央の肖像プレートは沼田一雅氏によるもので、先生のお好みの陶磁器製レリーフ、下部の銅版には略歴が刻まれている。地下に略歴を記した円筒形の陶製筒が埋設されていると聞くが見た事は無い(3)。 経年劣化のため当初のものは交換され、1978年に伊奈製陶(現・INAX)から寄付された複製が現在まで飾られている。
京都の岡崎公園には、1924年に開催された東宮殿下御成婚奉祝万国博覧会参加五十年記念博覧会に際し建立された記念碑が有ると聞く(4)。
ワグネル先生に関係するものに、江東区登録史跡の旭焼陶磁器窯跡(営団地下鉄半蔵門線森下駅から徒歩で7分)があると聞く。明治期に先生の開発された旭焼(白い陶器に釉薬をかけ絵付をする技法)の工場跡説明看板が建てられている(5)。
これらのワグネル先生の記念碑等は、関係者の努力で維持されているので、お近くに行かれる機会が有りましたら、お立ち寄り頂けると、先生も関係者も喜ばれると思う。
次回は、ワグネル先生のお誕生から東工大に来られるまでの波乱万丈の生涯を纏める予定です。
参考資料:
(1)東工大基本情報・ものつくりのこころ=「東工大」の伝統
https://www.titech.ac.jp/guide/guide_2023/guide/pdf/12-03.pdf
(2)https://ja.wikipedia.org/wiki/ゴットフリード・ワグネル#/media/ファイル
(3)窯業同窓会誌 第14号20頁(昭和51年)
(4)https://www2.city.kyoto.lg.jp/somu/rekishi/fm/ishibumi/html/sa231.html
(5)https://www.city.koto.lg.jp/103020/bunkasports/bunka/bunkazaisiseki/shiseki/15938.html
窯業同窓会誌 2004年号20頁(記念講演会リスト)
ワグネル精神は「美」「用」「学」の 3 つの言葉
窯業同窓会誌 2004年号21頁